FC2ブログ
ホーム   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト   »  1960年代邦画  »  仇討(1964年)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

仇討(1964年)

 下級武士である江崎新八(中村錦之助)が、些細なことから上級武士である奏者番・奥野孫太夫と口論、果たし状を突きつけられ、孫太夫を殺したことから、その弟・主馬に命を狙われ、それを倒すと、今度はまたその下の弟・辰之助を討手として仇討の願い書を出されるという、標的にされる方ににとっては気が変になってしまいそうな物語だ。

 中村錦之助(萬屋錦之介)という役者はテレビの『子連れ狼』ぐらいでしか知らず、かつて一世を風靡した時代劇スターぐらいの認識しか無かった。正直言うと、(錦之助に限らず他の時代劇スター達も)“顔の良さだけが売りの俳優”だと思っていた。この作品を観るまでは・・・。

 錦之助演じる江崎新八は下級武士でありながら武家社会の掟に忠実であろうとするのだが、しかし、死の恐怖を超越しているわけではない。普通の人間ならやはり怖い。主馬が自分を殺しにくると聞かされ、来たら知らせるよう百姓に頼む時の動揺した様子、いよいよ主馬がやってきて、恐怖を抑えヒイヒイ言いながら泣きそうな顔で主馬と対峙するシーン、そしてクライマックスの仇討シーンにおける死に物狂いの演技、どのシーンも錦之助にとっては物凄くカッコ悪いが、鬼気迫るものがあって、ただの二枚目俳優じゃなかったんだなあと感心させられる。
 また、この作品を観て、名作とそうでもない作品を分ける要素の一つに、人間をどこまでリアルに描いているか、ということもあるなあと思った。この作品にしても、「こういう時、人間はこういう反応をするんだろうなあ」という描写が実にリアルだ。それは取りも直さず今井正という監督の力なのだろうが、監督のイマジネーションを具現化し得た中村錦之助の演技力も素晴らしいんじゃないかと思う。

 そして、この作品、武士の世界というものは本当に理不尽な世界だなあと思わされる。出てくるお侍様達が悉く家や藩の体面だけに縛られている。究極の建前社会と言ってもいい。そんな社会の中で、新八が武士らしくあろうとすればするほど泥沼にハマっていき、やがて、討たれることしか道が無くなる。光悦和尚の「地獄極楽はこの世にある」という言葉通りだが、新八は地獄の方にハマってしまった。討手の辰之助から見ても、新八とは親しい間柄であったのに、武家社会の掟によってその新八と殺し合いをさせられるのだから地獄に違いない。この時代の侍なんかに生まれなくて本当に良かった。仇討場の周りに集まった町人や百姓達のほうが暮らしは苦しくてもよほど気楽そうでいい。

 物語は最初から最後まで理不尽と不条理の連続だが最後の最後もそうだった。辰之助にわざと討たれる覚悟を決めた新八が、いざ仇討場に来てみると、群衆が集まってまるで見世物会場のようになっているし、辰之助には六人もの助太刀がいる。新八の覚悟がぶち壊しにされている。これでもかこれでもかと理不尽な仕打ちを加えられ、新八はまるで急坂を転げ落ちるよう。「何でこうなるんだ!?」とこちらまで叫びたくなる気分だ。
 髪振り乱し必死に敵の攻撃をかわしていく新八。他のチャンバラ映画のように、涼しい顔で敵をバッサバッサなんてことはない。まさに死に物狂い。実際の仇討もこんな感じじゃなかったのかと思わされるほどで、今井正のリアリティに徹した演出が光っている。観てない人は是非本編を観て欲しい。文章が下手で上手く書けないが、この辺りの錦之助の演技がとにかく凄まじいので。
 やがて血まみれになって絶命し地面に倒れる新八。この絶命に至るまでのシーンも相当凄い。カラーでなくて良かった。色がついていたらこの無惨な姿は相当ショッキングだろう。
 
 観終わっても後味の悪さが残る作品だが、名作と言われる作品はやはり凄い。時代劇は時代劇で、色んな味の作品があり、チャンチャンバラバラばかりではないんだなと思い知らされた。そして、中村錦之助という名優の発見。食わず嫌いで今まであまり観てこなかったが、これからは他の作品も観ていこうと思う。

仇討『仇討』(1964年)
監督:今井正
脚本:橋本忍
製作:大川博
音楽:黛敏郎
編集:宮本信太郎
製作:東映京都
配給:東映

出演:中村錦之助、田村高廣、佐々木愛、神山繁、丹波哲郎、石立鉄男、加藤嘉、三津田健、三島雅夫、田中春男、信欣三、三田佳子、進藤英太郎、小沢昭一

【関連商品】残念ながらDVDは発売されていないようです。これほどの名作なのだからDVD化して欲しいものです。

にほんブログ村 映画ブログへ  

スポンサーサイト
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

Blik

Author:Blik
作品や監督、俳優等について深い知識は持ち合わせておりません。ハッキリ言えばニワカですので私の評はアテにしないでください。また今日も頓珍漢なこと書いてやがんなあ、ぐらいの感じで読むのが丁度良いかと思います。

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
PR
NHK 金曜ロードSHOW! 日曜洋画劇場 水曜プレミアムシネマ BS11 ホタルノヒカリ 愛と誠 臨場 劇場版 苦役列車 おおかみこどもの雨と雪 ヘルタースケルター ベティ・ブルー 海猿_BRAVE_HEARTS 日活100周年邦画クラシックス ボノロン 浅草花やしき こども商品券
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。