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ミツバチのささやき(1978年)

 Wikipediaを読むと、この作品は、フランコ独裁政権に対する批判をあらゆる隠喩に込めて表現した作品のようである。が、正直、監督が真に伝えようとしていたであろうメッセージは私には伝わってこず、単純に、純粋無垢な幼い少女の姿を幻想的な雰囲気の中で描いた作品だろうと思っていた。

 確かに暗喩を散りばめた詩のようで、ところどころ何かの意味を込めているような匂いのするシーンもあったが、結局最後まで分からなかったし、それはそれでいいのではないか。私はこの作品からは、無垢なるものへの賛美、だけを感じた。それでは作品の意図を全然理解していないじゃないかと言われそうだが、予備知識無しに観る者にとっては画面から伝わってくる情報以上のものを汲み取ることなど無理ではないか。それに、そんな隠された意味など読み取れなくても、この作品は充分名作なのだし。

 登場する二人の少女、イザベルとアナがとにかく可愛い。特に妹であり主人公であるアナはまるで天使のようだ。演技をしているのかどうかも分からないほど、表情も動きも実に自然だった。そしてこの子はよく走る。監督の意図によるものか、そのトコトコと走る姿を常に後から撮っているのだが、それが凄く可愛い。平原の中にポツンと建っている廃屋に精霊がいるということで、イザベルと二人で見にいった時も、どんどん中に入っていくイザベルに対し、廃屋のはるかこちらで固まったように動けないでいる姿も実に可愛かった。

 アナの無垢さは、図らずも、廃屋の兵士が殺されてしまう悲劇も招いたりと苦い部分もある。物語というものは最初と最後までの間に、主人公が成長するなど何かしら変化があるもので、兵士が殺されたことで何かを悟り一歩大人になる、というのが多くの映画のパターンなのだろうが、アナの場合、兵士がフランケンシュタイと同じ結果になったことで、ますます精霊を信じる気持ちに拍車がかかったような感じだ。夜中に目を覚まし、窓を開いて精霊に話しかけるシーンで終わる。最後まで純真無垢な少女のままだった。だが私はむしろそれが嬉しかった。出来ればアナには永遠にその姿と心でいて欲しい、と願うのは間違いだろうか?

ミツバチのささやき『ミツバチのささやき』(1978年)
監督:ビクトル・エリセ
脚本:ビクトル・エリセ、アンヘル・フェルナンデス・サントス
製作:エリアス・ケレヘタ
音楽:ルイス・デ・パブロ
撮影:ルイス・カドラード
編集:パブロ・ゴンザレス・デル・アモ
出演者:アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、 テレサ・ジンペラ

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帝銀事件 死刑囚(1964年)

 21日に書いた『黒部の太陽』熊井啓の、監督デビュー作だ。

 この作品を作るにあたっては、事件を徹底的にリサーチし、事件および捜査、裁判の詳細を鉛筆一本に至るまで完全に再現したと言う。事件の再現では、犯人の声が平沢貞通役・信欽三でないところを見ると、熊井監督が、平沢は冤罪だったとする立場をとっていたのは明らかだが、平沢に有利な情報も不利な情報も公平・客観的に盛り込んでいる。言わばドキュメンタリー・ドラマであり、多少の脚色はあろうが、帝銀事件を知りたければこの作品1本観ておけばかなり正確な知識が得られそうである、という点でお勧めしたい。(因みに、真犯人の声は加藤嘉さん。演じた方は誰だったか分からない)

 さて、感想だが、やはり、終戦直後の、GHQの占領下で起こった事件だということがポイントなのかな、と思った。この時代でなければ、平沢が有罪にされ、死ぬまで刑務所で過ごすことにはならなかったろう。と書くと、オマエも平沢無罪説か?と問われそうだが、この作品はかなり客観的に描かれており、この作品を見る限り無罪としか言いようがない。熊井の思う壺だと言われても構わない。

帝銀事件死刑囚_信欽三 当時から警察やマスコミも睨んでいたように、真犯人は防疫の仕事に従事しているか、過去に従事していた人間としか考えられない。最も有力だったのが旧731部隊の隊員だ。犯行に使われた毒物は旧731部隊で開発されたものだったからだ。
 しかし、GHQからの圧力でその線での捜査を無理やり中断させられてしまった。米国が旧731部隊の研究成果を欲していたからだ。
 これが平沢貞通の不幸の始まりだ。警察は何が何でも別の誰かを犯人に仕立て上げなければならなかった。その時たまたま網に引っかかってしまったのが平沢だったのだ。平沢が真犯人ではないことぐらい警察も裁判所も知っていたかも知れない。それでも、旧731部隊の残党を調べられない以上、平沢に罪をかぶってもらうしかない、そんな状況だったのではないか? 日本は1951年(昭和26年)、サンフランシスコ平和条約に調印して形の上では独立した。しかし、当時の極東情勢を見れば、まだアメリカの庇護が必用で、日本はアメリカの顔色を窺うことしか出来なかった。平沢を無罪にすれば、残る道は旧731部隊の残党に捜査をかけるしか無い。平沢を無罪にするわけにはいかなかった。歴代の法務大臣が平沢の死刑執行を拒んだのはなぜか、この辺りの事情を知っていたのではないか。そして平沢は、1951年(昭和26年)9月29日、東京高裁で控訴棄却。1955年(昭和30年)4月7日、最高裁で上告棄却、5月7日、死刑確定。
 戦後、戦犯裁判で多くの元日本兵が処刑された。無実の罪で殺された日本人も相当数いたようだ。彼らは戦争の犠牲者と言えるが、平沢も同じではなかったか?


 熊井監督は平沢自身のみならず、その家族の悲劇にも視点を向けている。平沢が有罪となったことで、家族はバラバラになってしまった。娘は日本にもいられなくなり、米国に渡る決断を余儀なくされた。今まで平沢のことばかり考えていた私だが、犯罪者の烙印を押されると、本人ばかりでなく、その家族にも悲劇が待っていることに気づかされた。何と罪深いことだろう。

 そしてマスコミだ。一人の記者が自らの報道姿勢を省みて漏らす言葉が印象的だった。
「世論については我々も責任がある。弁護団が言ってたね、ジャーナリズムが毎日クロと書き立てる。すると大衆は感情的に、批判もせずにそれを鵜呑みにしてしまう。戦争中と丸っきり同じだ。その世論の大きな暗示が証人・鑑定人に大きく作用している。裁判官にもその影響が無かったとは言えない。」
 この作品が作られたのは昭和39年だが、マスコミの悪弊については人々も気付き、恐らくジャーナリズムの世界に身を置く人々も自覚はしていたのだろう。だが、その自覚があるのに、未だにその癖は治らないようだ。だが、それはジャーナリストだけの責任だろうか? 大衆もそういう報道を望んではいないだろうか? 政治家と同じで、ジャーナリズムもその受け手となる大衆のレベルに合ったものにしかならないんじゃないか? そう思うと、私たち一人一人がもっと冷静に、賢くならなければと思う。



帝銀事件 死刑囚帝銀事件 死刑囚(1964年)
監督・脚本:熊井啓
音楽:伊福部昭
編集:丹治睦夫
配給:日活
出演:信欣三、内藤武敏井上昭文、高野由美、鈴木瑞穂

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モンゴル (日本公開:2008年)

 今日のネタもBS-プレミアムで放送していたやつで恐縮です。

 チンギス・ハーンが、まだテンジンという名前だった幼少期から、ハーンとして世界制覇に乗り出し始めた頃までを描いた作品。

 この手のスケール感を伴う戦いの物語は、ハリウッド以外には作れないだろうと思っていたが、そうではないと認識を新たにさせられた。
 恐らく私は平均的な映画ファンより鑑賞本数が乏しくてハリウッドの全てを知っているわけではないが、ハリウッドは、視覚的には凄い作品を作るものの内容はほとんどマンガみたいなところがある。エンタテイメントとしてはそれでいいのだろう。だが、何本も観ていると、一種、ハリウッド的映画の定型みたいなものが見えてきて、もう飽きたわこのパターンとウンザリさせられないわけでもない。そういう気分の時だったので、尚更この作品が素晴らしく見えたのかも知れない。

 監督、脚本、カメラ、どれをとっても申し分無い。特に絵の美しさには目を見張るものがあった。衣装はワダ・エミによるものだと言う。日本人が海外で活躍し、そしてそれが自分の目にも素晴らしい仕事だと映った時ほど嬉しいことは無い。そう言えば、主演の浅野忠信も今年5月公開のハリウッドSF大作『バトルシップ』に出演している。是非とも「いい仕事してるな」と思わせて欲しい。


 舞台は、まるでヤクザかマフィアのような連中ばかりが跋扈する野蛮な世界だ。道徳など存在しない。この当時は世界中そうだったのだろうが、子供でさえ常に死と隣り合わせ。武力しか頼るものがない。その緊張感が全編に漲っていて、最初から最後まで息つくひまも無かった。


 この世界に唯一存在する道徳は「法」だ。「法」と言うより「掟」と言うべきもので、今を生きる私たちが思い描くような「道徳」ではない。

 主人公であるテムジンでさえ、義兄弟の契を交わしたジャムカに不義理を働いている。
 それどころか、クライマックスとも言えるジャムカとの戦いでは、自分の兵を囮に敵をおびき出し、潜ませておいた射撃隊に味方の兵ごと皆殺しにさせるという非情極まりない戦法をとっている。監督セルゲイ・ボドロフはそこを包み隠さずちゃんと描いた。主人公だからと言って綺麗事で塗り固めたりはしない。なぜなら、テムジンは「法」にのみ縛られており、それは我々の道徳とは違うのだ。

 最後は、捉えたジャムカをそのまま逃すような甘いところも見せたりするが、それも彼にとっては「法」だ。彼は冷酷ではあるが、「法」には厳しい。モンゴル統一に乗り出すのも、モンゴルに「法」を確立するためだった。だから、自らが育った部族に帰ってきた時、「テムジンの父の死」に乗じてハーンになり、テムジンの命を執拗に付け狙ったタルグタイを殺して、テムジンに差し出した男は「法に背いた」としてテムジンの命で殺されている。法に厳しいテムジンは義兄弟であるジャムカを殺す訳にはいかなかったのだ。
 何かを成し遂げる人間は厳格な規範を自分の中に持っている。
 

 上に「ハリウッド以外には作れないだろうと思っていたが、そうではない」と書いたが、翻って日本映画はどうだろう? 日本は身の回りの話なら凄く良い作品を作る。ところが、アクション物や歴史物など、そこから一歩でも外に出た作品は非常に苦手ではないか? 『モンゴル』の監督セルゲイ・ボドロフはロシア人だが、ロシア人に出来て日本人に出来ないはずは無い。なんとか頑張って欲しいものだ。


モンゴル『モンゴル』(日本公開:2008年)
監督・脚本:セルゲイ・ボドロフ
製作:セルゲイ・ボドロフ、セルゲイ・セリリアノフ、アントン・メルニク
撮影:セルゲイ・ボドロフ、ロジェ・ストファーズ
編集:ザック・ステンバーグ
音楽:トゥオマス・カンテリネン
製作国:ドイツ、カザフスタン、モンゴル、ロシア
出演:浅野忠信、スン・ホンレイ、ホラン・チョローン、バー・セン


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黒部の太陽(1968年)

 NHK-BSで放映された『黒部の太陽』を観てみた。
「こういった作品は映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」と石原裕次郎が言い残したとかで、『黒部の太陽』は『栄光への5000キロ』と共に現在に至るまでソフト化されておらず、テレビで放映されるのも1979年10月以来実に33年ぶりということらしい。今観とかないと次はいつ観れるか分かったもんじゃない!と言うことで取り敢えず録画して観てみた。ただ、放映されたのが元の尺を1時間ぐらいカットした特別編だったのは残念だった。

 あらすじを簡単に書くと、関西電力が、電力の安定供給を目的に黒部に巨大なダムを建設することになり、第一工区から第三工区までの責任者として北川(三船敏郎)が任命される。ダム建設の為には現場に資材を運ぶためのルートが必用で、北川は、熊谷組・岩岡(石原裕次郎)と共にトンネル掘削工事に取り掛かる。黒部にはフォッサマグナが通っていて、破砕帯に当たったら、かなり困難なことになることを岩岡は懸念していたが、その懸念通り、トンネル掘削をする熊谷組の前に破砕帯が現れ、枯れることのない地下水の流出で足止めを食らう。北川と岩岡は第二、第三と数本のパイロットトンネルを掘ることで水抜きを試みるが、そのどれもが失敗する。それでも、次のパイロットトンネルを掘り、それがダメならまた次のパイロットトンネルと諦めることなく何本ものパイロットトンネルを掘って、とうとう破砕帯を突破することに成功、ダムは完成する、といった感じの筋だ。

 圧倒的なスケール感、そして男臭いぐらに男臭い二人の大俳優の共演。それに黛敏郎の荘重な音楽が加わって申し分の無い大作に仕上がっている。だが、それ以上に、この映画がまさに日本人の不屈の精神を讃える作品になっているところが良い。
 その工事がいかに困難なものであったかは少しは知っていたが、こうやって目の前に見せられると思わず唸ってしまう。最初のほうで、切り立った崖にあるキャットウォークのような道を重い荷物を担いで人夫達が歩くシーン。見ているだけでこちらまでゾワゾワしてくるが、これはフィクションではなく、実際にここを歩いて登ったのだと思うと、彼らの心の中には何があったのだろう?と考えてしまう。
 大変な時代で、こんな仕事でもやらなければ生きていけないということも確かにあっただろう。しかし、それ以上に、彼らの心の中には新しい日本を作るんだという決意があったのではないか?
 黒部ダムの事業が開始されたのは1956年。1956年といえば、経済企画庁が「もはや戦後ではない」と経済白書で宣言した年だ。前年からは神武景気も始まり、取り敢えず復興の時期は過ぎていただろう。しかし、復興の後に求められるのは成長だ。そのためになくてはならないのが電力の安定供給だったのだ。
 北川の心の中には、日本の未来のためにという使命感があったに違いない。戦争でボロボロになった日本を不死鳥のように蘇らせるのだという思いだ。その思いは岩岡も共有していたろうし、もしかしたらその下の人夫達にもあったかも知れない。一部の人夫達は途中で去っていったが、一方に残った人夫達がいる。彼らが単に生活のためだけにダム工事に従事していたと考えるのはあまりに寂しい。
 トンネルは彼らの命懸けの働きによって貫通した。ダムが完成するまでに出した殉職者の数は171人に上ると言う。それでも彼らは日本の未来のためにやり遂げなければならなかった。その後の日本の繁栄の礎を作った男達に心からの敬意を表したい。

黒部の太陽『黒部の太陽』 (1968年)
監督:熊井啓
脚本:井手雅人、熊井啓
原作:木本正次
音楽:黛敏郎
撮影:金宇満司
編集:丹治睦夫
製作:三船プロダクション、石原プロモーション
配給:日活
協力:関西電力、間組、鹿島建設、熊谷組、佐藤工業、大成建設、ブルトーザー工事、日本国土開発、朝日ヘリコプター、小松製作所

出演:三船敏郎、石原裕次郎、二谷英明、宇野重吉、滝沢修、辰巳柳太郎、佐野周二、岡田英次、芦田伸介、志村喬、柳永二郎、玉川伊佐男、高津住男、加藤武、成瀬昌彦、信欣三、大滝秀治、下川辰平、庄司永建、鈴木瑞穂、日色ともゑ、樫山文枝、川口晶、内藤武敏、榎木兵衛、武藤章生、高峰三枝子

【参考】
熊谷組「黒部の太陽について」

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木本正次・著『黒部の太陽』信濃毎日新聞社[文庫]
木本正次・著『黒部の太陽』新潮社[単行本]


熊井啓・著『黒部の太陽・ミフネと裕次郎』新潮社 [単行本]
内容(「BOOK」データベースより)
昭和43年公開『黒部の太陽』(製作・主演/三船敏郎・石原裕次郎、監督/熊井啓)は、観客動員733万人、興収16億円(現在の80億円相当)の大ヒットとなった前代未聞の超大作映画である。しかし、完成・公開に至るまでには、想像を絶する苦難の日々があった。五社協定の壁、配給問題、資金調達、裕次郎が骨折した大出水シーンの撮影…。それでも男たちは、ひたすら突き進む。その後、裕次郎の「大画面でのみ、お客様に観ていただきたい」との要望で、再上映もDVD化もされていない。あれから38年。監督だからこそ知りうる秘話を満載し、何かに熱くなることだけがすべてだった“あの時代”が、いま、鮮烈によみがえる。


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家族ゲーム(1983年)

 本間洋平の原作は読んでないのだが、あらすじや書評などを読む限り、互いに無関心な家族を戯画的に描いた作品らしい。要するに「家族崩壊」の話だ。

 森田芳光監督はそれを自分なりに味付けして見せてくれた。

 一見、どこにでもある普通の家族の姿だ。どこが崩壊してんだ?と私には見えた。

 だが、よく見ると、家族同士の無関心ぶりや自己中心な様を表現したシーンは随所に散りばめられている。母親が、早くに子供を産んだことで子供に縛られっぱなしの人生を送ることになったのを後悔していたり、子供の進路決定に関する大事なことを家庭教師に任せてしまったり、長年連れ添っていながら自分の亭主の好きなものを知らなかったり、戸川純など義父が死ぬことより葬式をどうするかを心配していたり・・・

 その最たるものが、家族全員が横一列に並んでとる食事の風景だろう。『家族ゲーム』と言えば、常に真っ先に話題にされるあのシーンだ。

 崩壊家庭の姿を描くことは、同時に、従前のホームドラマの常識をぶっ壊すことに繋がる。横一列の食卓もその一つだが、やり過ぎだろ?と思わなくもない。なぜ森田監督がそこまでやったか?
 森田監督は、崩壊家庭を描くことより従前のホームドラマの破壊の方をよりやりたかったんじゃなかろうか?と私は想像する。次男が高校に合格した日の晩餐がメチャクチャになるシーンも、ぶっ壊してやったぞという森田監督からのメッセージだと見るのは穿ち過ぎだろうか?

 だからといって、崩壊家庭を描くことなどどうでもよかったとは言わない。全編にシュールな演出を施すことで、家族に漂う不安感を表現している。森田流なのだ。
 松田優作演じる家庭教師も、どこまでも掴みどころのない人物像に描かれていて不気味だ。
 ラストのヘリの音。それを聞きながら眠っていく母親は、彼女の、社会に対する無関心をも象徴しているのだろうが、観客は、ヘリの音に得体の知れない不安感を掻き立てられながら映画を観終わることになる。

 森田監督は、新しい時代のホームドラマを作ったのだ。そして、それは不安感に溢れていた。


『家族ゲーム』(1983年)
監督:森田芳光
製作:佐々木志郎、岡田裕、佐々木史朗
原作:本間洋平
脚本:森田芳光
企画:多賀祥介、山田耕大
撮影:前田米造
美術:中澤克巳
編集:川島章正
録音:小野寺修
スクリプター:竹内健二
助監督:金子修介
制作補 :桜井潤一
配給:ATG

出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一

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LIAR GAME The Final Stage (2010年)

 録画したまま放置しておいた『LIAR GAME The Final Stage』を観てみた。

 他の人間が他の人間のリンゴを投票できるならゲームにならないじゃないかと思ったし、全員が赤リンゴを選べば全員に1億入るなら、敢えて何億もの借金を抱えるリスクを冒すより、全員赤リンゴに投票するほうを普通は選ぶだろ!?と思って視聴中止しかけたのだが、まあ、それじゃあ話が続かないし、そういう穴には目を瞑って最後まで観るだけ観てみようと観続けているうち、だんだん引き込まれ、「次はどうなる? 次はどうなる?」と早く先を見たくて堪らない気分になっていた。しかも展開が結構早いので退屈させられることも無く、さすがにテレビドラマのヒットを受けて映画化されたばかりでなくそれがシリーズ化されたというだけあって、面白い作品ではあった(お金を払ってまで観ようとは思わないが)。

 にしても、戸田恵梨香が可愛いかった。人を疑うことを知らない馬鹿正直な娘・神崎直役。実際あの状況で人を疑わない人間が本当にいたとすれば、作中のセリフにあったように「馬鹿正直ではなく馬鹿」だろうが、そんな人並み外れたお人好しぷりと戸田さんの可愛いらしい顔とがあいまって、不覚にもファンになりそうになった。ところが、新作『ライアーゲーム 再生』には出演していないようで、ナゼ?と思ってぐぐってみたところ、どうも言動が元で松田翔太に敬遠されたと言う。どこまで本当か分からないが。

 そしてその松田翔太だが、兄・龍平はそれほどでもないけど、翔太はかなりのイケメンだ。しかも、少し俯き加減だと父・優作にソックリで、「ああ、やっぱり親子だなあ・・・」と唸ってしまった。しかも、あんなイケメンにもかかわらず、公開中の『アフロ田中』のようなコメディ映画にも躊躇なく出演するような気取りの無さもあるし、幅広い演技力を身に付けようとしているようで好感が持てる。正直、ライアーゲームでの演技は上手いとは思わなかったが、10年後、20年後、どういう役者になっているか楽しみな俳優だ。
 
 さて、今公開中の新作では、吉瀬美智子がやっていたような役を芦田愛菜チャンがやっているらしい。随分と興味を引かれる趣向でかなり観てみたい。かなり・・・。でも、この作品はやはりお金を払ってまで観るほどのもんじゃないかなあ?と思う。緊迫感もあって観てる間は楽しいけれど、観終わっても「ああ、面白かった」だけで残る物があまり無い。一応“人を信じることは素晴らしい”みたいなメッセージらしきものがあるにはあるのだが・・・私の心にはイマイチだった。営業妨害と言われそうだが、それが私の採点だ。スイマセン。

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『LIAR GAME The Final Stage』(2010年)
脚本:黒岩勉、岡田道尚
音楽:中田ヤスタカ(capsule)
監督:松山博昭
制作:亀山千広、鳥嶋和彦、島谷能成
制作統括:石原隆、和田行
プロデューサー:宮川朋之、瀬田裕幸、古都真也
アソシエイトプロデューサー:志牟田徹、東康之
制作:フジテレビジョン、集英社、東宝、FNS27社
制作プロダクション:FILM
配給:東宝

出演:戸田恵梨香、松田翔太、鈴木浩介、吉瀬美智子、渡辺いっけい

獄門島 (1977年)

 いつもの金田一物映画だなあ、というのが第一印象。巨匠・市川崑が撮るのだから、ケチのつけ所も見当たらないが、可もなく不可もなく、第一作『犬神家の一族』をなぞってるなといった感じ。決して駄作ではないけれど、金田一耕助自身のファンでないならば、犬神家だけ見てればいいかな?とも思う。

 ただ、単なるミステリー映画なのに、登場人物同士の関係が明らかになった時、観る者を泣かせるものがあって、崑の術中にハマってたまるかと思いつつ、今回もやっぱり私は泣かせられたのだった。

 伏線の張り方も実に巧みだ。冒頭に出ていた足の悪い傷痍軍人、踏切の手前でそれが芝居だったことが分かるシーンがあるのだが、単にユーモアを添えるためのシーンかと思いきや、後で、それが大きな意味を持っていたことを知らされる。本当に巧いですね、この辺り。

 タイトルバックに荻野目慶子の名前があるのを見ていたので、どこに出てるんだ?と探しながら見ていて、てっきり阿呆三人娘の内の一人かと思っていたら、別の、かなり大きい役で出ていた。失礼しました。と言ったら、阿呆三人娘の一人を演じていた浅野ゆう子に失礼だろうか? 考えてみれば、1977年と言えば、荻野目さん、まだ13歳で、阿呆三人娘をやる歳じゃないのだった。それぐらいすぐ計算しろよ、オレ。

 にしても、良い役者が出ている。佐分利信はいつ見ても貫禄があるし、東野英治郎は、これが水戸黄門と同じ人かと思うぐらい偏屈で迫力のある爺さんを演じていた。司葉子も綺麗、大原麗子も綺麗。出演する役者達の顔を見ているだけで幸せな気分になり、水野晴郎ではないが、やっぱり映画っていいもんですねえ、という気分になる。そんな一本です。

獄門島『獄門島』(1977年)
原作:横溝正史
監督:市川崑
脚本:久里子亭
音楽:田辺信一
撮影:長谷川清
照明:佐藤幸次郎
美術:村木忍
録音:矢野口文雄
編集:池田美千子 / 長田千鶴子

出演:石坂浩二、加藤武、大原麗子、司葉子、太地喜和子、ピーター、浅野ゆう子、中村七枝子、一ノ瀬康子、草笛光子、内藤武敏、大滝秀治、上條恒彦、松村達雄、稲葉義男、小林昭二、辻萬長、坂口良子、三木のり平、東野英治郎、佐分利信、荻野目慶子、三谷昇

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サード(1978年)

サード2 「ホームベースとは一体何だ!?」とサードが呟く。
 ホームベースとは・・・人生のゴール? あるいは生きる目的とか目標とか、そんなものだろうか? 自分の中で考えてみるに、やはり私にだってホームベースは見つからない。と言うか、そんなこと考えたことも無い。多くの人が、ホームベースがどこか分からないけれど、なんとなく走り続けてるんじゃないだろうか? 

 退屈極まりない少年院の生活。頭を丸められ、ダサイ制服を着せられ、意味があるのかどうかも分からない規律に縛られ、面白くもない労働をしながら送る毎日。見ているこちらまでウンザリしてくる。だからと言って、外の世界なら生き生き出来るのか?

 サードは、オシから「君には希望があるのか?」と聞かれて、「やりたいことならあるよ」と答えるが、オシは「私の希望は私には退屈だ」と言う。何かの文学作品の一文なのだろうか、「牢屋にいる時、私は時々世界を美しいと思った」と続けるサードに、オシは「その後には『自由になるとまた倦怠を感じた』と続くんだよ」と返す。
 この世にあるのは“終わりなき日常”だけだ。オシにはそれが耐えられなかったらしい。脱走し、自ら命を絶った。これが彼のホームベースだった。

 サードは、少年院に護送される途中で出くわした、祭りの光景を見て軽い興奮を覚える。
「死んだような俺の町とは違う」
そこに非日常を見たのだろうか。
「来年の9月、少年院を出たらここへ走ってこよう。ここは“9月の街”だ」

 しかし、そこが、ただ通り過ぎるだけで、ホームベースでないことは知っている。人間は一生走り続けなければならない。IIBのような軟弱者はヘトヘトだ。
「走れよ、自分の速さで」
生きている限り走り続けなければならない。チームは組めない。自分の人生は一人で走らなければならない。

 それを知っているサードは私より大人だ。



サード1 地味~~~~な作品だ。
 娯楽性に乏しく、少年院に慰問(?)に来る女たちを少年たちが妄想の中で犯したり、森下愛子が裸になってなかったら、最後まで観なかったかも知れない。
 だが、退屈に見えるシーンの数々を「乗り越えて」ラストシーンにたどり着いた時、作り手のメッセージがはっきり伝わってくるという点で秀作の一つには違いない。
 ラストで延々と走り続けるサード、これがこの作品の全てを象徴しているように思う。

 あと、芝居しているように見えない人が多く出ている。素人だろうか? 役者達も、会話やディスカッションのシーンでは、映画的な喋り方じゃなくいかにも普通の喋り方をしている。まるでドキュメンタリーを見ているようだ。東陽一監督はドキュメンタリー作品からスタートしているが、そういう雰囲気を使ってリアリティーを高める効果を狙ったものだろうか? ご本人に聞いてみないと分からない。

 最後まで分からなかったのは浴衣の少女の意味。経血の流れる足のアップまで撮っていたから何かを表現していたのだろうが、私には分からなかった。いつもと違う出来事を表現しているんだろうか? いや、分からない。


サードDVD『サード』(1978年)
原作:軒上泊『九月の町』
監督:東陽一
脚本:寺山修司
音楽:田中未知
撮影:川上皓市
照明:上村栄喜
美術:綾部郁郎
録音:久保田幸雄
編集:市原啓子
配給:日本アート・シアター・ギルド 
製作:幻燈社、日本アート・シアター・ギルド

出演:永島敏行、吉田次昭、森下愛子、志方亜紀子、島倉千代子、内藤武敏

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名探偵・金田一耕助シリーズ

 テレビ放映時のタイトルは『名探偵金田一耕助の傑作推理』。大昔に観た時、いかにも2時間ドラマ的な作りであまり面白くなかったので二度と観なかったシリーズです。
 どういうワケか今私の中に金田一耕助の再ブームが到来しているので、半ば気まぐれのように観てしまいました。そして思ったことは、「面白くないものは何度観ても面白くないな」ってことです。昔観た時は面白くなかったけど今見たら面白かったという作品もたまにはありますが、これは10年後、20年後に観返しても多分つまらないままでしょう。
 
 観たのは『人面疽』というタイトルの一本で、2003年の作品。
 ヒロイン役に斉藤由貴が配されてますが、2003年といえば斉藤さんも既に37歳。その歳でも十分可愛いのは斉藤さんの凄さですが、やはり熟女というカテゴリーに片足突っ込んでますし容色衰えている面は否定出来ません。それが、娘の役で旅館の跡取り息子の嫁になれるかどうかなんてやってるんですから興醒めです。
 古谷一行の金田一耕助も最早初老、横溝正史シリーズの頃の若々しく陽気な金田一ではなくなっていました。観ていて痛々しささえ覚えます。

 金田一物の妖美な雰囲気も皆無。人が死ぬたびに「祟りじゃ~~~~~!!」とおおぬさを振る巫女が出てきますが、これ出せば金田一物っぽくなるよねえっと言ったノリで安易に出している感がアリアリで、その老巫女が「祟りじゃ~~~~~!!」と喚くたびに後から蹴飛ばしたくなる衝動に駆られました。
 
 この辺、ストーリーを書かないと読んでも分からないと思いますが、かまわず続けます。
 
 そもそも、話がおかしいのです。斉藤次官が死んだ時、三原じゅん子がお守りを探しますが、なぜ三億円の隠し場所がそのお守りに書いてあると思ったのか? 事前にそのお守りの神社に隠したと聞いていたのか? たとえそうだとしても、代々伝わる古い旅館の床下にどうやって三億円もの金を埋められると思ったのか、結局金はありませんでしたが当たり前です。もう話の作りが荒いことと言ったらありません。大概の2時間ドラマはこの調子です。
 
 本当に時間の無駄でした。二度と観ないと思います。

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暴力教室(1976年)

ストーリー
転任教師・溝口を待ち受けていたのは、学園の管理体制に牙を向く暴力学生の一群であった。ナイフの洗礼にも冷静な溝口に一瞬圧倒されるが、逆に反抗的態度をとるリーダーの喜多条。ある日喜多条らのグループに、理事長の娘・ますみの姿があった。ますみを目撃した美人教師・花房は彼女を諭すが効き目がなく、学園幹部は溝口を利用する。
学園は生徒会長・新田を筆頭とする体育会グループと喜多条らを対立させることで正常化を図るが、この過程で学園の汚職が発覚し、花房が汚職追及に立ち上がる。校長は花房の行動を封じるため、新田らを利用し、溝口家を訪問した花房と溝口の妹・淳子を暴行させる。淳子は自殺し、溝口は喜多条らの仕業と勘違いするが、花房、喜多条の話を聞いて学園側の罠だと知る。校長、理事の汚いやり口に激怒した溝口と喜多条らは、暴力で学園側に迫っていくのだった…。
映連データベースより)



暴力教室 今は削除されているようですが、ちょっと前までYouTubeに上がっていた予告編を見て、面白そうだなと思ったんで観てみました。

 さすが東映、最後まで退屈させませんね。面白かったです。予告編を見て想像していたのは、もっと衝撃的な内容だったのですが、いざ、見てみると、クールスの面々はどちらかと言うとコミカルな役回り。やっていることも大したこと無いです。予告編ではショックを煽るようなBGMを使っていたのに、本編のオープニングでは“陽気でご機嫌なナンバー”を使ってましたし。前半のノリはビー・バップ・ハイスクールかちょっとハードな「われら青春」といった感じで実に楽しいです。

 主演の松田優作も、暗い過去がある教師を雰囲気たっぷりに演じてますが、この作品ではむしろ舘ひろしの方が印象的でした。これが俳優としてのデビュー作だそうですが、目つきが鋭くて本当に悪そうなツラをしてます(芝居はあんまり上手くなかったですが)。

 バイク集団を率いてたり、金持ちのボンボンだったりと、後に出演する『野性の証明』の大場成明役を思わせるのですが、この作品の設定を土台にして作られた役だったんじゃないのかな?と思ったりしてます。

 今YouTubeで配信してるようなので、興味のある方は観てみてください。→YouTube『暴力教室』(ただし有料です)


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『暴力教室』  (1976年)

監督:岡本明久
脚本:神波史男、奥山貞行、岡本明久、福湯通夫
音楽:菊池俊輔
撮影:中島芳男
照明:川崎保之丞
美術:中村修一郎
録音:長井修堂
編集:田中修

挿入歌:「恋のテディボーイ」
(作詞・作曲・編曲:大木トオル、歌・演奏:クールス)

出演:松田優作、舘ひろし、南条弘二、安西マリア、山本由香利、玉川雅己、村上一海、 佐藤秀光、大久保喜一、ジェームス藤木、渡辺和裕、佐藤蛾次郎、結城なほ子、小畠絹子、安部徹、名和宏、室田日出男、丹波哲郎

サウンドトラック集→暴力教室/俺達に墓はない/ヨコハマBJブルース

天使のはらわた 赤い教室 (1979年)

 “にっかつロマンポルノ”の名作ということで観てみました。

赤い教室1 エロ本出版の仕事をしている村木(蟹江敬三)は、1本のブルーフィルム(今で言う無修正AVみたいなもの)を見て、そこに出演している女に恋をします。なんとかその女に会いたいと思い続けていた村木は、偶然にもその女・名美(水原ゆう紀)を見つけ出します。

 しかし、ブルーフィルムは、実際にレイプしている現場を撮ったもので、その後の名美の人生は大きく狂わされていました。名美は心が荒み、男というものを信用しないばかりか憎しみさえ抱く女になっていたのです。村木は己の赤心を吐露します。エロ本の出版をやっていることも話しました。村木の心は通じました。名美は自分の名前を教えます。

「名美・・・土屋名美」

 人生を破壊された女と陽の当たる場所を歩けない男、境遇に恵まれない二人の心が一瞬だけ結びつきます。しかし、それは本当に一瞬でした。

 明日改めて会って欲しいという村木の言葉を信じ、約束の場所で待つ名美でしたが、村木がやってこないのです。村木は、以前使ったモデルが未成年だったことで警察に捕まっていたのでした。

赤い教室2 裏切られたと思った名美は、酒場で知り合った男とラブホテルに入り、精を吸い尽くさんばかりに男を貪ります。まるで男を喰うモノノケのようです。しかしそれは、性欲の昂りからではなく、男をいたぶっているのだなということが伝わってきます。これが彼女流の男への憎しみのぶつけ方なのでしょう。オマエなんかどうせこの程度のもんだろ?と言ってるようにさえ見えます。

 搦め捕られてしまった男もいます。“マーちゃん”と呼ばれ、Barブルーでオカマのバーテンをさせらている男も、名美と知り合わなければドブ水の中を這い回るような人生は送っていなかったことでしょう。名美によって地獄に引きずり込まれたのでした。呪い殺せるものなら全ての男を呪い殺したい。名美の体からはそんな負のオーラが沸き立っています。

 村木と再会する名美ですが、もう村木を受け入れる気配はありません。

 毒を喰らわば皿までとばかりに、名美の行動は、自分から地獄へ地獄へと突き進んでいってるようにも見えます。マーちゃんとの白黒ショーのシーンは、この作品の最大の見せ場でしょう。腐った世界を見てしまいました。ショッキングでした。

 しかし、ラストでは希望が見えました。「行こう、オレと一緒に」と、腐った世界からの脱出を促す村木に「来る? あなたが」とはぐらかす名美。なおも説得する村木。水たまりに映った名美の顔が悲しそうです。心が葛藤しているのです。もしかしたら、もう一度村木を信じるかも知れない。そして、村木と一緒にそこを出ていくかも知れない。私はそう感じました。そうあって欲しいです。 


 名作と言われるだけあって、物語はちゃんと作られてました。“にっかつロマンポルノ”だけあって濡れ場が散りばめられてますが、それはポルノだからではなく、セックスが無いと成り立たない物語だからであり、そういう類の物語もあるんだなと認識させられました。
 一本のブルーフィルムが女の心をここまで荒廃させてしまうのか、他に道は無かったのか、名美という女を見ていると、こちらの心までどんよりと澱んでいきそうです。ロマンポルノでこんな陰鬱な気分にさせられるとは思ってもいませんでした。名作です。

石井隆1 原作は、この作品で脚本も書いている石井隆の劇画。映画監督としても有名ですが、ご存知のように、創作活動のスタートは劇画からです。とにかく絵が上手い方でした。大友克洋か石井隆かってぐらい上手いです。調べると、一番最後の単行本は旧作を収めた『名美・イン・ブルー』で2001年の発行です。もう描いてないのかな? 勿体無いです。高校時代から映画関係のサークルで活動したり、その後、映画会社で助監の手伝いのバイトもしてたようだから、元々映画の方をやりたかったのかも知れませんが。にしても、才能豊かな方ですね・・・羨ましいです。


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赤い教室3天使のはらわた 赤い教室』 (1979年) 
監督:曽根中生
脚本:石井隆、曽根中生
原作:石井隆
出演:水原ゆう紀、蟹江敬三、あきじゅん、水島美奈子、堀礼文、河西健司、草薙良一、影山英俊


真珠郎(1978年)

真珠郎2

真珠郎はどこにいる? 
城北大学講師椎名肇はその目ではっきりと見た。信州鳥越湖畔の柳の下、目も彩に飛び交う無数の蛍火に包まれて、蹌踉として立った絶世の美青年真珠郎。しかもその真珠郎が女のような真っ白な手を鮮血に染めて二度ならず三度までも殺人の惨劇を繰り返そうとは・・・
 (オープニングナレーションより)

《あらすじ》 
真珠郎3 城北大学講師・椎名(原田大二郎)は、ある日、校舎の窓から「ヨカナーンの首」のような雲が浮かんでいるのを見て驚愕する。東洋哲学講師・乙骨(中山仁)から「君は疲れている」と言って旅に誘われた椎名は、彼と共に信州にある鵜藤という人物の屋敷へ向かう。
 途中のバスで、椎名は偶然にも友人である金田一耕助(古谷一行)と出会う。金田一もまた近所に逗留する予定だった。バスにはもう一人、奇妙な老婆が乗り込んできて、椎名と乙骨が鳥越湖畔に向かうと聞くや、「引き返せ、鳥越湖に行ってはいけない、血の匂いがする、湖は血で真っ赤になる」と訳の分からぬことを喚いて降りていく。
真珠郎4 鵜藤家に着いた二人を、鵜藤氏の姪・由美(大谷直子)が出迎える。鵜藤氏(岡田英次)は、元は東京で生物学の研究をしていたが、事情でこの地に隠棲している。半身不随で、顔の半分に醜いアザがある。姪の由美を2,3年前に引き取り、元は遊郭だったというこの屋敷に、二人だけで住んでいる。
 村人たちの間には、その屋敷にもう一人別の人間が隠れ住んでいるという噂があった。椎名と乙骨も、屋敷内の蔵にもう一人の人間がいると疑うが、由美が蔵を案内してもその存在は確認できなかった。
 そして真夜中、外からの物音で目覚めた二人は、柳の木の下に、妖のような絶世の美青年が立っているのを目撃する。翌朝、二人からそのことを聞いた鵜藤氏はひどく驚愕した様子である。
真珠郎1 そして、椎名と乙骨が湖でボートを漕いでいる時、突然浅間山が噴火し、岸に急ぐ二人は、あの美青年が日本刀で鵜藤氏を斬殺するのを目撃する。急いで屋敷に帰り、鵜藤氏の姿を探す椎名、乙骨、由美の前に、再びあの老婆が現れ、三人を「逃げ水の淵」という湖畔の洞窟に導く。そこで彼らが見た物は首の無い鵜藤氏の死体だった。 あの美青年の名は真珠郎。ある女への復讐のため、鵜藤氏によって作り上げられた美しき殺人鬼だった。そして、その殺人鬼は、帰京した椎名の周辺に姿を見せるようになる。真珠郎の次の標的は誰なのか?




 1978年5月、TBS系『横溝正史シリーズⅡ 』として全3回で放映された作品です。

真珠郎5 妖しいですね、真珠郎。凄く耽美なキャラクターで、金田一物の登場人物の中でも一番好きです(原作の『真珠郎』は金田一耕助物ではありませんが)。
 願わくば、映像化するにあたっては、もう少し綺麗な女優さんをキャスティングして欲しかったと思います。いえ、別に早川絵美さんが綺麗じゃないとは言いません。ただ、もうチョットその・・・まあ、これ以上は言いますまい。どっちかって言うと、由美役だった大谷直子さんが真珠郎をやれば良かったのになあと思ってます。目が綺麗ですからね。真珠郎は目が綺麗な人じゃないとダメだというのが私の持論です。大谷さん、最近はメディアへの露出も少なくて寂しい限りです。もう還暦過ぎちゃってるようですが、まだまだ十分美しい方です。

 ちなみに、真珠郎役の早川絵美さんについて調べたんですが、特撮番組『ザ・カゲスター』でベルスターを演じた方だったんですね。カゲスターは救いようのないほどカッコ悪かったので観てなかったのですが、幼い頃のヒーローの一人ではありまして、早川さんがベルスターだったことで一挙に彼女への親近感が湧きました。尚、早川さんのご主人は同じく特撮番組『秘密戦隊ゴレンジャー』でアカレンジャーだった誠直也さんです。『特捜最前線』の吉野刑事役でもお馴染みですね。
 
 古谷一行さんの金田一耕助も明るくていい!! 石坂金田一と、まあ似たような雰囲気ですが、それを更に明るくした感じです。「誰が演じた金田一耕助が好きか?」というテーマでアンケートを取ると、大体、石坂さん、古谷さんが3位以下を大きく離してトップにくるのですが、それも分かります。当たり役ってやつですね。

 怪しく耽美な世界がお好きな方にはお勧めです。尚、横溝正史シリーズⅡ主題歌『あざみの如く棘あれば』について、作詞の阿久悠氏が書かれた文章がありましたので貼っておきます→『あまり売れなかったが なぜか愛しい歌』



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『真珠郎』
(1978年 5月13日~5月27日・全3回)
企画;角川春樹事務所、毎日放送
原作:横溝正史
監督:大洲齊
脚本:安藤日出男
音楽:真鍋理一郎
製作:毎日放送、大映京都、映像京都
主題歌:あざみの如く棘あれば( 作詞:阿久悠 作曲・歌:茶木みやこ)
出演:古谷一行、大谷直子、原田大二郎、中山仁、早川絵美、岡田英次、加藤嘉、藤原釜足、長門勇

八つ墓村 (1977年) 主演:萩原健一

八つ墓村1 この映画は、はるか昔の高校時代にテレビでやってたのを一度観たっきりなんですが、今日改めて観た時、とんでもない記憶違いをしていることに気づきました。渥美清が金田一耕助なのは覚えていたのですが、その金田一耕助が、今多くの人が思い浮かべる着物に袴ではなく普通の洋服を着ていたのです。私の記憶の中ではずっと石坂金田一と同じあのコスチュームで思い返されていたので、渥美金田一が初めて登場したシーンでは持っていたコーヒーカップを膝の上に落としそうになりました。

 なぜ、そのような記憶違いが起こったのか? 理由は多分、この作品の主人公が金田一耕助ではないためです。
 主役はあくまで萩原健一扮する寺田辰弥。だから辰也中心にストーリーが進行し、金田一耕助は完璧な脇役、登場シーンも本当に少ないです。影が薄いといいますか、あまり活躍していません。一応、探偵として登場する以上、最後に真犯人が誰かを告げる役回りは与えられているものの、その推理結果に至った過程の描写はごっそり削除されてます。ある意味、この映画は横溝物映画ではあっても、金田一物映画ではないのかも知れず、横溝ファンというより金田一耕助のファンなんだという方は不満を感じるかも知れませんね。

 しかも、それが普通のオジサンの格好じゃあ、「こんなの金田一じゃないやい!!」と駄々をこねたくもなりますが、『八つ墓村』は松竹作品であり、東宝と同じ金田一にするワケにはイカン!!ということもあったのかも知れません。また、石坂浩二で金田一耕助のイメージが定着する以前は、中尾彬がジーパン姿の金田一耕助をやったり、高倉健にいたってはスーツ姿のダンディな金田一をやってたそうですし、これで文句を言うのは、私のように『犬神家』から金田一を知った“ニワカ”なのかも知れません。

八つ墓村3 それに、この作品、舞台が、終戦直後ではなく現代に置き換えられていて(もちろん、現代と言っても今から三十数年前の現代ですよ)、その時代に袴姿の人なんていませんからね。

 この、舞台を現代に置き換えるという趣向は良い効果を上げてます。祟りや怨霊の跋扈する田舎と、都会との対比が凄く利いているのです。辰也の職場を、空港といういかにも現代的な場所に設定したのも多分狙ってのことでしょう。高校の頃、一番最後で辰也が都会に戻ってきて飛行機の誘導をやってる姿を見た時は、「“普通の世界”に戻れてよかったな~・・・」とホッした気分になったのを覚えてます。その直前のカットが、山の上から、炎上する多治見家を八人の落ち武者(の亡霊?)が見下ろしている姿ですから、なおさら「よかったな~~~」という気分でした。

 余談ですが、この多治見家が炎上するシーンは特撮ではありません。莫大な金をかけて作った屋敷を本当に燃やしちゃったのだそうです。当時の新聞に載ってました。おかげで遠くからの俯瞰でも凄い迫力が感じられ、見せ場の一つになってます。

 で、八人の落ち武者なんですが、彼らを村人が惨殺するシーンもムゴかった。見ながら、「この糞百姓どもがーーー!!」と奥歯をギリギリ噛み締めていました。絵自体は、まるで安っぽい怪談映画のようなところもあるし、チョットやり過ぎだろ?とも思う反面、いや、これぐらいやらないと、尼子義孝がなぜ末代まで祟る怨念を抱くに至ったかが伝わらないじゃないかとも思います。

 そして、尼子義孝の怨霊に操られるようにして起こった、辰也の父・多治見要蔵による村人大量殺人事件です。前の落ち武者虐殺シーンと違って、このシーンはやたらリアルでした。モチーフが実際に起こった津山三十人殺しであることは有名ですが、野村芳太郎監督、その事件を現場で見てたんじゃないか?と思えるほどで、まるで悪夢のようでした。多治見要蔵役の山崎努も、元があの顔なのに(ゴメンナサイ)、更にその顔にあんな不気味なメイクをして、頭に鬼の角のように懐中電灯を差して、その格好だけでもキ○ガイなのに、それが狂人丸出しの形相で夜の闇を疾駆するんですから、まあ、夜の通りであんなのに出くわしたら私なら0.1秒以内に失神する自信があります。

 こうして次々と凄惨なシーンが続くこの物語、「もう勘弁して~~~~!!(泣)」と、思わず叫んでしまいそう。しかし、野村芳太郎監督は、クライマックスの前にとびきり美しいシーンを用意してくれていたのです。



 それは、辰也と美也子の二人が“竜のアギト”を探そうと言って、二人だけで地下の鍾乳洞の中を歩いていくシーンです。八つ墓村2芥川也寸志による「道行のテーマ」をバックに、手に手を取りあって歩く二人。やがて見つかる“竜のアギト”、辰也が産まれた場所です。辰也と美也子の交情シーンに、辰也の、母と父の結ばれるカットがオーバーラップし、本当に美しいシーンになってます。それを彩る芥川也寸志の、これまた美しすぎるほどに美しい音楽が、おどろおどろしく残虐な作品に格調を添えました。
 この数分間があるが故に、『八つ墓村』は、『犬神家の一族』に勝るとも劣らない名作になり得たと私は確信してます。
 金田一映画、あるいは横溝映画を知らない今の若い世代の人には是非観ていただきたい作品です。ただし、他の作品も観るつもりなら、これを真っ先に観ちゃうと、他のがつまんなく見えるかも知れないのでご注意を。

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八つ墓村4『八つ墓村』(1977年)
監督:野村芳太郎
製作:野村芳太郎、杉崎重美、織田明
原作:横溝正史
脚色:橋本忍
撮影:川又昂
音楽:芥川也寸志
美術:森田郷平
編集:太田和夫
録音:山本忠彦
照明:小林松太郎

出演:萩原健一(寺田辰弥)、小川真由美(森美也子)、山崎努(多治見要蔵、久弥)、山本陽子(多治見春代)、市原悦子(多治見小竹)、山口仁奈子(多治見小梅)、中野良子(井川鶴子)、加藤嘉(井川丑松)、井川比佐志(井川勘治)、花澤徳衛(磯川警部)、綿引洪(矢島刑事)、下絛アトム(新井巡査)、夏八木勲(尼子義孝)、田中邦衛(落武者A)、稲葉義男(落武者B)、橋本功(庄左衛門)、大滝秀治(諏訪弁護士)、夏純子(美也子の妹・和江)、藤岡琢也(久野医師)、下絛正巳(工藤校長)、山谷初男(馬喰吉蔵)、浜田寅彦(吉岡太一郎)、浜村純(森荘吉)、任田順好(濃茶の尼)、渥美清(金田一耕肋)




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野性の証明(1978年) 主演:高倉健

オープニングナレーションより
「陸上自衛隊では、特に能力と精神力に優れた隊員を選抜して、各方面隊総監部直属の特殊工作隊を編成している。特殊工作隊の目的と実態は完全な極秘事項とされているが、その訓練は常に実戦が想定され、想像を絶するばかりに苛烈である。例えば、この山岳行動訓練では、どことも知れぬ秘境地帯に隊員を単独で残して、所定の目的地まで到着することが要求される。たとえそれが、一ヶ月の行程であっても、携帯食料は三日分と限定され、あとは全て自給自足で、一般住民との接触は絶対厳禁である。
言わば、特殊工作隊員は人間能力の限界点を超えることを要求され、数万年前の原始人の持っていた能力、つまり、飢え、孤独、自然の猛威や野性の生物と闘う力を持たねばならない。今、味沢一等陸曹達が降り立った地点は日本のチベットと言われる青森、岩手、宮城3県にまたがる広大な北上山地の、どことも知れぬ原生林の真っ只中である。」


野性の証明3国家権力により比類ない殺人技術を叩き込まれた男が、暴力によって不幸に陥れた一人の少女の中に、自らの人間性の回復を託そうとする。だが、その少女さえも奪われた時、男に残されたのは、全身を駆け巡る闘いの血だけだった。暴力の持つ悲しい矛盾性の中で、人間の尊厳と愛を証明しようとした男のハードな生き様が鮮烈に描き出される!薬師丸ひろ子鮮烈デビュー作!! 高倉健が男の野性を爆発させる壮絶なバトルアクション大作。
映連データベースより)

製作:角川春樹
原作:森村誠一
監督:佐藤純彌
脚本:高田宏治
音楽:大野雄二
撮影:姫田真佐久
照明:熊谷秀夫
美術:徳田博
録音:紅谷愃一
編集:鍋島淳
出演:高倉健、中野良子、薬師丸ひろ子、夏木勲、ハナ肇、梅宮辰夫、舘ひろし、原田大二郎、成田三樹夫、松方弘樹、北林谷栄、田中邦衛、山本圭、金子信雄、芦田伸介、田村高廣、丹波哲郎、三国連太郎
主題歌:「戦士の休息」(作詞:山川啓介 作・編曲:大野雄二 歌:町田義人)


 『野性の証明』です。薬師丸ひろ子のデビュー作です。

 「お父っちゃば殺さないでけれ!!」

 薬師丸ひろ子の映画の中での第一声がこれでした。このセリフから彼女の女優人生が始まったのか、と思うと感慨深いものがあります。東北弁が上手でした。

野性の証明1 劇場公開時から現在に至るまで、『野性の証明』という作品名が出ると、「おまえはサンドバッグか?」と言いたくなるほど、とにかく叩きまくられる作品でもあります。
 まあ、分からんでもありません。最初から最後まで、これほどツッコミ所の多い作品は珍しいですから。しかし、それでも私はこの作品が好きです。決して薬師丸さんのデビュー作だからと言う訳ではありませんよ、決して、決して。
 
 これほどツッコミ所の多い作品は珍しいと書きましたが、同時に、これほどハッタリの利いた作品も珍しいと思います。“お祭り感”とでも言いましょうか、たとえコケオドシと言われようが派手で景気のいいシーンがふんだんに盛り込まれていて、この熱気は他社作品ではそうは味わえないのではないでしょうか。金持ちのボンボンの道楽と映る面も無きにしも非ずですが、そんなことは観客の私にはどうでもいいことです。
 当時、“映画界の風雲児”と呼ばれ飛ぶ鳥も落とす勢いだった角川春樹氏。順風満帆、向かうところ敵ナシ、そんな角川さんのオラ、オラ、オラ~~~!!と言わんばかりの強気が、いい方向に作用しているなと私は思うのです。
 
 いいところはまだあります。音楽です。角川作品への罵倒は腐るほど聞きましたが、角川映画の音楽を貶す声はあまり聞いたことがありません。主題歌・主題曲だけはホントにイイですよね、角川映画は。町田義人が歌う『戦士の休息』は映画主題歌の名曲として定番ですし、オープニングの『野性への序曲』は聴くたびに燃えます。この曲、味沢達のいる山小屋に向かって、22名の特殊部隊員達がヘリから降下してくる、クライマックスの始まりとも言えるシーンにも使われてますね。

「俺達が助かる方法は、3つしか無いと思う。この演習は3日間続くはずだ。その間中どこかへじっと隠れているか、演習地の外へ逃げ出すか、あるいはあの22名を倒すかだ」

 味沢がこう言うやいなや、『野性への序曲』をBGMにヘリから降下してくる特殊部隊員達。何度観ても鳥肌モノのシーンです。そして怖かったです。OPの過酷な訓練を見た人なら分かってもらえるはずです、大場の手下どもとはレベルが違うヤツらが次々と降りてくるんです!!
野性の証明2

 ・・・ところが、この特殊部隊員達はいとも簡単に味沢達に倒されていきます。味沢に倒されるならいいですよ、松方弘樹扮する皆川二等陸佐から「Ajisawa is a best Commando!!」って言われるぐらいの隊員だったんですから。でも、戦闘訓練など受けていない北野刑事にまでやられるって何なんですか?「お、おまえら、能力と精神力に優れた特殊部隊員じゃないのかよ!?」って言いたくなります。トホホです。(あ・・・言っちゃった、悪口!!)

 まあ、この際ですからもう一つ言ってしまいます。
 自衛隊を辞め、今は保険外務員として働いている主人公・味沢(高倉健)は、最初、おいらん淵で死んだ井崎明美が保険金詐取の目的で殺されたと見て動いています。
 一方、越智朋子(中野良子)は、それとは別に大場一成(三國連太郎)率いる大場帝国の不正を暴くために動いています。
 その前に、ある部落で村民皆殺しという全然別の事件があり、刑事・北野(夏木勲)は味沢が犯人だと睨んで動いています。
 自衛隊は自衛隊で、特殊部隊を辞めた味沢を要注意除隊者として監視し、別の角度から話に絡んでくる。
 と言った具合に、それぞれの登場人物が全然別の方向に向かって一斉に動いていて、それを整理するのが大変です。
 しかも、前半、味沢と朋子の敵は大場一族だったのに、クライマックスでは大場のことなどどこかに行ってしまって、敵は自衛隊特殊部隊に変わってしまいます。大場のことはどうなったのか、最後まで説明がありませんでした。
 その最後(最後の最後)にしたって、味沢の敵は自衛隊特殊部隊であって自衛隊全体ではないはずなのに、味沢が銃をぶっぱなしながら向かっていく先にいるのはどう考えても普通の自衛隊です。この点がどう考えても分かりません。
 
 と悪口も書いてしまいましたが、再度言っておきます。
 私はこの作品が大好きです!!


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町田義人 スーパーベスト
1. 赤い狩人 演奏:ゴダイゴ -映画『キタキツネ物語』
2. 雨はナイフのようさ 演奏:-ゴダイゴ 映画『キタキツネ物語』
3. 戦士の休息 -映画『野性の証明』
4. 銀河を泳げ -映画『野性の証明』
5. 宝島 コーラス:コロムビアゆりかご会 -テレビアニメ『宝島』※町田よしと名義で発表
6. まだ見ぬ世界へ コーラス:コロムビアゆりかご会 -テレビアニメ『宝島』※町田よしと名義で発表
7. 航海日誌 -テレビアニメ『宝島』※町田よしと名義で発表
8. 小さな船乗り -テレビアニメ『宝島』※町田よしと名義で発表
9. 美しい女(ルビ=ひと)…エメラルダス -文化放送 セイ! ヤング スペースファンタジー「エメラルダスII」
10. 男たちのバラード -文化放送 セイ! ヤング スペースファンタジー「エメラルダスII」
11. 愛 -テレビドラマ『87分署シリーズ~裸の街』
12. ジ・エンド -テレビドラマ『87分署シリーズ~裸の街』
13. 10億光年の愛 -劇場用アニメ『サイボーグ009 超銀河伝説』
14. さらばとは言わない(We'll never say good-bye) -劇場用アニメ『サイボーグ009 超銀河伝説』
15. 男たちの朝 演奏:TALIZMAN -スペシャル・アニメ『三国志』
16. 若い河のように 演奏:TALIZMAN -スペシャル・アニメ『三国志』
17. 長距離ランナー
18. コンサート・ツアー*「長距離ランナー」C/W曲
19. 白いサンゴ礁'79
20. WINTER GLORY
21. 白いアルカディア*「WINTER GLORY」C/W曲

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プロフィール

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Author:Blik
作品や監督、俳優等について深い知識は持ち合わせておりません。ハッキリ言えばニワカですので私の評はアテにしないでください。また今日も頓珍漢なこと書いてやがんなあ、ぐらいの感じで読むのが丁度良いかと思います。

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